AI前提で、仕事そのものを作り変える。PdM・CSが実践する新しい働き方

「AIを使うようになって、仕事の幅が広がった。」そう話すのは、香りの総合プラットフォーム「カラリア」を運営するHigh Linkで働く、PdMの安達とCSの佐々木です。

問い合わせ対応、仕様確認、PBI作成、情報整理——。
以前は誰かに聞かなければ進まなかったことも、AIを活用することで、自分たちで前に進められるようになったといいます。

二人は、日々どのようにAIを活用しているのか。そして、AIによって働き方はどのように変わったのか。
本記事では、PdMとCSそれぞれの視点から、High LinkにおけるリアルなAI活用について話を聞きました。

カラリアらしい温かみのあるCSを、AIで再現する

ーーまず、それぞれの役割と業務内容を教えてください。

佐々木:カスタマーサポート(CS)を担当している佐々木です。「ユーザーの方とサービスの架け橋になりたい」という思いで、お問い合わせ対応やFAQ整備、そこから得たヒントをもとにしたサービス改善などに取り組んでいます。

 

安達:プロダクトマネージャー(PdM)として、複数のプロジェクトを担当している安達です。最近は、キャンペーンの特設LPや登録動線の設計、SEOの改善施策などを進めています。

ーー今回のテーマは「AI活用」です。まず、CSではどのようにAIを活用していますか?

佐々木:1年かけて、「返信テンプレートの提案システム」を構築しました。お問い合わせ内容と登録情報をAIに読み込ませると、大量のテンプレートから最適な返信文を提案してくれる仕組みです。

以前からテンプレート自体はあったのですが、Notionで管理していたので探すのが大変で。膨大な一覧から合うものを選び、状況に応じて文章を修正する作業に、ずいぶん時間が取られていたんです。

ーー大量のテンプレートとのことですが、全部でどのくらいあるんですか?

佐々木:大カテゴリーが10個あって、それぞれに最大60項目。合わせると500〜600パターンほどあります。

ーー500〜600パターン……!すごい数ですね。

佐々木:もともとカラリアのCSでは、ユーザー一人ひとりの情報を確認しながら、オーダーメイドに近い形でお応えしてきたんです。そのおかげか「カラリアのCS対応は親切」と言っていただくことも多くて、その温かみは絶対に手放したくなかったんですよね。

ただその分、過去のキャンペーン内容や細かな仕様まで、覚えておくことがたくさんあって。そこでAIを活用し、必要な情報をすぐ引き出せる仕組みに変えることにしたんです。温かみは維持したいから、状況ごとに細かく対応できるよう、テンプレートも細分化していきました。その結果、500〜600パターンになってしまった、というわけです(笑)。

ーーAIを活用しているとはいえ、これだけの規模を構築するのは大変だったのではないですか?

佐々木:そうですね。特に大変だったのは、「カラリアのサービスを0から10まで言語化すること」でした。どんな仕組みで、どんなケースにどう対応するのか。人間同士なら文脈や常識で補える部分も、AIには明確に言語化して伝えないと判断できないんですよね。

たとえばAIに「このお問い合わせには、どのテンプレートが適切か」を提案させても、最初は適切なテンプレートを選べる確率が3割ほどでした。「なぜこの回答になるんだろう」とAIの誤りを一つひとつ分析しては、サービス説明やテンプレートのどこを直すべきか、少しずつ修正を重ねていきました。大変な作業でしたが、その結果今では、体感8割くらいは違和感のない提案を返してくれるようになったんですよ。

ーー3割から8割まで上がるとは、相当な改善ですよね。これにより、仕事の仕方はどう変わりましたか?

佐々木:以前は、休み明けはほぼ丸1日お問い合わせ対応に時間を使っていました。それが今は、同じ量のお問い合わせが来ても半日ほどで対応できるようになりました。

Claude Codeで、1日かかっていた作業が1時間に

ーーCSはAIの活用で、ものすごい効果が出ているのですね。つづいて、PdMのAI活用についても教えてください。安達さんはどのようにAIを使っていますか?

安達:もう、AIがないと仕事ができないですね(笑)。一番頼っているのは、Claude Codeです。

PdMの仕事のひとつに、PBI(Product Backlog Item。施策の目的・仕様・受け入れ条件をまとめた開発タスク票)にまとめる作業があります。このとき、「このタスクで何を実現したいのか」「どんな価値を届けるのか」を丁寧に書き込み、デザイナーやエンジニアが内容を見た瞬間に着手できるレベルまで仕上げる必要があるんです。

この作成を、Claude Codeに支えてもらっています。以前は、例えば1つのキャンペーンに関わるPBIをすべて作り切るのに丸1日かかっていたところを、1〜2時間ほどで概ね作り切ることができるようになりました。

ーーそんなに短く……!具体的には、どう使っているんですか?

安達:例えば新しいキャンペーンを行う場合、過去の類似キャンペーンがあればそれに関するPBIやドキュメントをすべてClaude Codeに読み込ませます。その上で今回との差分をざっくり伝えて、社内テンプレートに沿ったPBI作成を依頼する、という流れです。このとき「今回の特典内容は?」「登録導線はどうする?」といった要件の抜け漏れをClaude Codeが質問してくれるように設計しているので、それに答えていくと5〜10分でたたき台が完成します。あとは人の目で修正しながら精度を上げていく、という流れですね。

AIをうまく活用するには、前提条件を明確にすることが大切だと実感しています。「誰向けなのか」「何を目的にするのか」などの情報を以前よりも丁寧に言語化するようになりました。

ーー二人とも、AIで仕事の仕方が大きく変わったのですね。ほかにも、社内でのAI活用例があれば教えてください。

佐々木:「nyarchitect(ニャーキテクト)」と「mofflytics(モフリティクス)」を紹介させてください。

nyarchitectは、カラリアのシステム仕様を教えてくれるコードベース解説エージェントです。カラリアでは機能改善やキャンペーン施策などによる仕様変更が日々発生しています。そのため「この仕様はいつ変わった?」「当時のキャンペーン条件は?」と、時系列で把握しないと答えられないお問い合わせも多くて。

以前は、すべてのキャンペーンのSlackチャンネルに入って情報を追いかけ、過去ログを検索して……それでも分からなければ、PdMやエンジニアに確認をお願いしていました。情報を集めるだけで時間がかかってしまい、朝に届いたお問い合わせの返信が、夜になってしまうこともあったんです。

それが今は、nyarchitectに聞けばSlackですぐ返ってくるから、本当に大きな変化ですね。

安達:PdMでも重宝しています。「この施策、実装は重そう?」といったざっくりした相談にも、必要な工数や実装内容を返してくれるんです。以前はちょっとした相談でも、関係者と時間を合わせる必要がありました。ただその場合、相談したくてもすぐには聞けないこともあって……。それが今は、相手の時間を取らずに自分のタイミングで判断できるから、うれしいですね。

ーーもう一方の「mofflytics」についても教えてください。

佐々木:mofflyticsは、社内データ分析エージェントです。

たとえば「注文した覚えがない香水が届いた」というお問い合わせをいただいたとします。以前はエンジニアに調査をお願いする必要があり、「ご注文の履歴に含まれていたので、お送りしました」のように、結果だけをお伝えするしかなかったんです。ユーザーの方からすると、「注文した覚えはないんだけど……」と納得しきれないですよね。

でも今はmofflyticsに尋ねれば、その香水がいつ次回発送予定に追加され、いつ削除されたのか、決済処理との前後関係はどうだったのかが、時系列ですぐに分かります。だから、「◯日に追加されましたが、その後◯日に削除されました。ただし、削除のタイミングが決済処理の後だったため、その回の発送には反映されませんでした」というように、具体的にお伝えできるんです。

ユーザーの方にも納得していただけることが増え、結果的に、満足度の向上にもつながっています。

AI活用で生まれた時間で、自分と仕事の可能性を広げていく

ーーお二人ともAIを駆使して、仕事の仕方を変えていることがよく分かりました。これだけ働き方が変わってくると、時間の使い方や意識も変わってきたのではないですか?

安達:私は「AIに読み込ませる前提」で仕事をするようになりました。Claude Codeを使ううちに、AIが理解しやすい資料を残せば残すほど、仕事が前に進むことが分かってきたからです。

だから今は、ミーティングのログや決まった仕様は必ずドキュメントに残すようにしています。情報を頭の中やコミュニケーションの中にとどめるのではなく、「資産化する」ことに時間を使うようになりましたね。

佐々木:私は「改善」に時間を使えるようになりました。以前は、お問い合わせ対応や調査だけで一日が終わってしまうことも多かったんです。でも今は、ユーザーの方の声から課題を整理して、エンジニアやデザイナーに改善案を直接相談できるようになりました。自己紹介で「ユーザーの方とサービスの架け橋になりたい」とお話ししましたが、その役割がようやく果たせるようになってきた感覚です。

 

ーー時間や意識に余裕が生まれた分、新しい挑戦にも踏み出せそうですね。

安達:そうなんです。私は今、「脱PdM」を目指しているんですよ。PdMの仕事だけにとどまらず、実装やデザインまで自分でできるようになりたいな、と。

ーー通常、PdMは企画やプロジェクト管理が主な仕事で、実装はエンジニアの領域ですよね。たとえば、どんな挑戦を始めたのでしょうか?

安達:直近では、カラリアのトップページに関するSEO施策を、自分で実装してリリースしました。

Claude CodeにPBIの情報を与えて「これを実装したい」と伝えると、プルリクエスト(コード変更の提案)の初稿まで作ってくれるんです。動作確認をした後、エンジニアにコードレビューしてもらい、フィードバックを反映してリリースまで進められました。

とはいえ、PdMが企画からデザイン・実装・リリースまで全部できる、という自分の理想からすると、まだ30%くらいの達成度です。でも1年前の自分と比べたら、仕事の仕方だけでなく、内容も大きく変わってきたな、と感じます。

ーーAIを活用することで、職種を超えた挑戦ができるようになったのですね。

安達そうなんです。「PdMだから企画まで」「エンジニアだから実装まで」という線引きが、AIによってどんどん溶けていく感覚があるんです。そしてエンジニアやデザイナーも、私の挑戦を応援してくれる。だから、職種にとらわれずに前向きに踏み出せるんです。

背景には、「新しい技術はとりあえずみんなで触ってみよう」という社内の空気もあると思います。技術組織のリーダーが引っ張ってくれていますし、勉強会も開かれています。そういう環境だから、挑戦に踏み出しやすいんですよね。



佐々木私も、CSの返信テンプレート提案システムを作るときに、エンジニアと協力しながら進めてきました。「効率化する」だけではなく、「ユーザーの方への寄り添いをAIでどう実現するか」まで、職種をまたいで話せる。だからこそ、CSの私が「ユーザーの方とサービスの架け橋」になるという挑戦も、続けていけるのかなと思っています。

テンプレートはAIが提案してくれますが、「このユーザーの方は本当は何に困っているんだろう?」を考えるのは、やっぱり人間にしかできないことです。AIで作業や調査の時間が減った分、以前よりユーザーの方に向き合える時間は増えました。AIで人らしさが減るのではなく、AIがあるからこそ、もっと人と向き合える。そうやって、CSも、サービスも、もっと広げていけたらいいなと思っています。

 

ライター:木全 彩花
企画・編集:波多野 佑紀

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