2024年4月17日、High Linkはコーポレートブランドのリニューアルを発表しました。 リニューアルに費やした時間は、なんと1年以上。数々のスタートアップのコーポレートブランディングを手がけたPARKさんにご協力いただき、新たなCIとVIを掲げるに至りました。 「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」というPhilosophyは、いかにして生まれたのか。事業ドメインを“LifeTech”に定めたのには、どのような背景があるのか——。 本記事では、リニューアルを検討したきっかけから、プロセス、これから目指す未来について、プロジェクトの指揮を執った執行役員の小林将也とPARK代表の三好拓朗さんの対談を通じて明らかにしていきます。 |
停滞と限界を突破する言葉を探して
──── 小林さんは入社して間もなく、CI・VIのリニューアルに着手されています。どのような経緯があったのでしょうか。
小林:入社してから早い段階で経営会議に参加していたのですが、経営陣間で方向性の軸が定まっていないことに気が付きました。「連続的に事業を立ち上げていく」という共通の意向はありつつ、どのような事業を立ち上げていくのかは曖昧だったのです。
また、社内のメンバーに話を聞いてみると、自社を「カラリアを運営する会社」だと認識しているケースが多かった。経営陣間で認識が揃っていないだけでなく、社内では「連続的に事業を立ち上げていく」という意思疎通すらできていなかったのです。
このままでは組織に一体感がなく、くわえて社外に対してメッセージを発信するのも難しい。いずれにせよ、会社として目指す方向性を経営としてしっかりと議論する必要があるし、精緻に言語化する必要があると感じていました。
──── 目指す方向性を明確にし、社内で共通認識を持たなければ、いずれ壁にぶつかる未来が見えていた?
小林:すでに壁にぶつかっていたような気もします。目指す方向性が曖昧だったので、長い時間軸で事業やプロダクトについて考えることができておらず、Quarterごとにいま解くべき問題や課題を見極めて解決していくようなボトムアップの経営しかできていなかったので。
採用に関しても、半径5メートル以内まで来てもらえたら説明できるけど、なかなか半径5メートル以内まで来てもらえないという課題も見えてきました。
採用の観点でいえば、今はまさにスタートアップにとって戦国時代です。
テクノロジーの発展と終身雇用の崩壊を起点に、多くの分野で大企業とスタートアップが入り乱れる構造になってきたとはいえ、優秀なタレントを獲得できるスタートアップは本当に一握り。シリアルの起業家たちが、どんどん優秀な人材を吸収していく構造になっています。
社会から見て、端的に「何者なのか」が分からないと、現状の採用マーケットではまず戦えません。群雄割拠の時代を勝ち抜くためのVisionやValueが育まれていないことが、すでに課題として顕在化していました。
僕自身が感じたことですが、以前のMissionやValueはサッパリとしていましたが、実態はスマートでありつつ泥臭くてウェットなカルチャーです。つまり、自分たちのカルチャーや魅力をうまく伝えられていないことは明確な課題でした。
表現するのが難しいのですが、たしかにパワーのある船には乗っているけれど、船長ですらどこに向かっているかを把握していないような状態だったのです。
──── CI・VIのリニューアルは、パートナーにPARKさんを指名されています。どのような理由から、お声がけしたのでしょうか。
小林:すべて自分たちで実施することも含め、いくつかの候補があったのですが、スタートアップという生き物をもっとも理解していると感じられたPARKさんにお願いすることにしました。
10XさんやPOSIWILLさんの事例を拝見し、CI・VIを明確に定義すると、実態というか内面まで変化していくことを感じていたので、同じような変化を起こしてくださるのではないかと期待していましたね。
三好:スタートアップからの依頼はすごく多いです。きっかけはSkyland Venturesさんとのお仕事でつくった「フライングで、投資する。」というVALUEが話題になったことだったと思います。
僕自身、スタートアップとのお仕事が大好きです。経営陣とダイレクトにお話しでき、愛を感じながら手がけられる案件が多いので。
ただ、High Linkさんとのお仕事はこれまで以上に難しく、「とても苦労したな……」というのが本音です。
わくわくで、あらゆる枠を超えていく
──── CI・VIのリニューアルは、どのようなプロセスで実施されたのでしょうか。
三好:リニューアルにあたり、まずはMissionの作成に着手したのですが、これがいきなり難しかった。話を聞いてみれば聞いてみるほど、Missionが存在しない会社だったのです。
代表の南木さんに、あらゆる角度から質問や仮説をぶつけてみたのですが、「こういう世界をつくりたい」とか「こういう価値を世の中に与えたい」とか、そういったものが出てこなくて。
小林:社内でも同じことが起きていて、「どうしたいんですか?」と意志を尋ねても、答えが出てこないことが多くありました。「分からないけど、成長していきたいね」といった回答をされることが多くて(笑)。
三好:ただ、むしろすごいことだと思ったんですよね。採用など目的を達成するために「こういうことは言っておいたほうがいい」と思えば、僕たちの提案を飲み込むことだってできたと思います。
でも、自分がしっくり来ていないことには、決して「YES」と言わなかった。
これは後になって理解できたことですが、南木さんは「そこに山があるから登る人」なんです。理由があるから山を登るのではなく、そこに山があれば登ってしまう。
最近は社会課題解決への想いを原動力にしている会社が増えていますが、これくらい清々しい会社があってもいいよねって。
「おもしろそうだから、やってみる」くらい原始的なモチベーションは、人間という生き物が本来的に生まれ持ったものです。南木さんにはそれが強く感じられたので、思い切って振り切る選択をしたら、プロジェクトが一気に動き出しました。
──── だからMissionではなく、Philosophy?
小林:これはPARKさんに提案していただいた表現ですが、とてもしっくり来ました。「ありのままの自分たち」を受け入れられる表現だったからです。
以前は、High Linkは大きなエンジンを積んでいる船だけど、どんなエネルギーによってエンジンを動かしているのかを理解できていなかったし、どこに向かって船を操縦しているのか分かっていなかった。
だから、Missionを考えようとしても出てこなかったのですが、Philosophyという表現をすれば、自分たちをうまく表現できる気がしました。
──── 最終的に「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」というPhilosophyになりました。どのようにして、意思決定されたのでしょうか。
三好:経営陣を中心にヒアリングをしていくと、何度も「わくわく」という言葉が出てきました。これがひとつのキーワードになることは間違いないように思えたので、まずはこの言葉をベースにして、いくつかの方向性を探っていきました。
小林:何度かご提案していただき、そのたびに5つくらいの方向性を提示してもらって、さらに深堀りして絞り込んでいきました。それらに対して経営陣で議論をする形で進めていたのですが、あるとき「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」という言葉が出てきて、即決でした。「これだよね」って。
自分たちでも理解できていませんでしたが、どうして僕らは山を登るのかが、一言で説明されていた気がします。僕たちは自分自身の枠を超えたいし、組織として非連続の成長をしていきたいし、固定化された常識すら超えていきたい。その原動力は好奇心であり、進捗感であり、人それぞれだけど、端的に言うなら「わくわく」だよねって。
アイデンティティーは、会議室から出てこない
──── Philosophyにくわえ、“生きるを彩る Life Tech Company”というスローガンも掲げられています。スローガンは、どのような意図で作成したのでしょうか。
小林:Philosophyはいわば価値観で、僕たちが何を大切にして働くのかを言い表しています。これだけでもスタンスは伝わると思うのですが、何をやっている会社なのかは伝わらないので、それを明確に表現できる言葉を探していました。それがスローガンであり、当初は採用活動のためのものだったんです。
三好:「成長できる環境です」「フラットな環境で気持ちよく働けます」といったように、求職者に対する価値をベースにコミュニケーションすることもできたのですが、話し合いを進めた結果「事業理解をベースにしたい」ということになりましたよね。
小林:連続的に事業を立ち上げていく未来を想像しつつ、一方でカラリア以外に既存事業がなかったので、どのような事業ドメインで、どのような成長戦略を描いていくのか、より的確に説明したかったんです。
三好:当時はドメインを定めることに、南木さんは抵抗感を持っていましたよね。領域を定めることなく事業を立ち上げていきたいという思いを持っているので、制限をかけることに違和感があったのかもしれません。
ただ、話し合いを進めていくと、実はなんでもいいわけではなく、人々の生活を彩ることに関心があることが分かってきました。ここにHigh Linkらしい先進性やテックドリブンなアプローチを匂わせられないかなと言葉を探した結果、”Life Tech Company”というドメインが生まれ、さらに彼らの想いを頭に加えることで“生きるを彩る Life Tech Company”というスローガンが浮かび上がってきました。
小林:スローガンができたことで、まず社外の方に自社の説明がしやすくなりました。これまでは「香水のサブスクの会社」という認識をされていましたが、これはHigh Linkの一部であり、起点であり、すべてではないということが、スムーズに伝えられるようになったんです。
それだけでなく、「自分たちは“Life Tech Company”だよね」「人生を彩る事業をつくっていきたいね」という会話が頻繁に起こるようになり、経営がしやすくなりました。
会議室から突然出てきた言葉ではなく、すでにあるものを取り出してもらったので、メンバーにも納得感があり、想像していた以上に組織が結束したと思います。
三好:それっぽい言葉を掲げても、事業成長に寄与しないなら、意味がないじゃないですか。だからこそ、ちゃんとあらゆる可能性を考慮して、その中から「これを選びとったんだ」という納得感を持ってもらうことは大切にしていました。
最終的にはひとつの言葉に絞られますが、その裏には無数の案があり、それらを精査してもらい、議論しながら考えてきたからこその成果だと思っています。
小林:Valueを策定するにあたっても、納得感を重視しました。
スタートアップにおけるValueとは、自分たちが置かれている環境のゲームルールを理解し、勝ち続けるための作戦を言語化したものだと考えています。「これらを強烈に体現すれば、勝ち続ける組織になる」と言い切れるものに設定すべきです。
ただ、理想論を掲げるのでは意味がなく、無意識的に行動や意思決定に落とし込めるよう、組織に浸透するものでなければいけません。なので、本当に大切なことだけを厳選しました。
リニューアル以前の言葉を引き継いでいるものもありますし、新たに策定したものであっても、なるべく社内で使われている言葉を使用するようにしました。
Valueを私たちなりの言葉に言い換えるなら、「わくわくで、あらゆる枠を超えていくために、当たり前にやり続けるべきだと信じているもの」です。レベルの高い要求だとは思いますが、この5つのValueを体現し続ければ、間違いなくPhilosophyに忠実であれると確信しています。
──── カラフルなVIも印象的です。どのようにして、デザインされたのでしょうか。
三好:ロゴはPhilosophyの「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」をストレートに表したものに決まりました。枠を超えて進む動きのダイナミックさと、「わくわく」感を表現しています。ロゴの右にある「わくわく」をあらわしたマークは「ハイマーク」と呼んで、単体でも使えるように設計しました。
WEBでの表現も、もともとは「わくわく」というキーワードを拠り所にしてつくっていく予定でした。ただ、“生きるを彩る Life Tech Company”というスローガンができ、この言葉を入り口にデザインしたほうが対外的に説明しやすいという意向もあって、現在のようなデザインになっています。
カラフルなデザインは、「生きるを彩る」というメッセージを。軽快で大胆な動きは、ハイリンクのアプローチの仕方を表しています。
小林:仕事を楽しむ無邪気さがありつつ、キレのある思考や大人っぽさを持った組織でもあるので、一見すると相反するキーワードを落とし込むのは根気のいる仕事でした。
VIもいくつもの方向性を提示してもらい、議論しながら進められたので、最終的には僕らをうまく表現するデザインになっていると思います。
生きるを彩る Life Tech Companyへ
──── CI・VIのリニューアルをする以前と以後で、どのような変化があったと感じていますか。
小林:経営陣のWillが育まれたり、未来への解像度が上がったり、経営がしやすくなったことが一番の財産だと思っています。あらゆる角度からあらゆる方向性でご提案していただいたのに、捨て案がひとつもなく、侃侃諤諤と議論できたのが理由です。
改めて、僕らはこれからも山を登り続けるし、いろんな山を登っていくんだということが理解できました。「生きるを彩る」というテーマに向き合い続ける覚悟もでき、やるべきことが研ぎ澄まされたと思います。
──── High Linkという組織を深く知っていく過程で、どのような印象を抱いたか、三好さんから第三者目線で教えていただきたいです。
三好:まっすぐに高い山を目指す、とても気持ちのいい会社だと思いました。原動力の源泉は“内側”にある。他者を上回りたいとか、お金持ちになりたいとか、他者からの見え方を気にしたものではないんです。「高い山を登りたい」という、純粋無垢な好奇心に突き動かされているように見えます。
それでいて、ただ楽しむことに重きを置いているわけではないのも特徴だと思います。本気で楽しむために、全力を尽くしている。
野球を本気で楽しむ球児が、甲子園に出ることを目標に掲げるのに似ているかもしれません(甲子園を目指したことはないので間違っていたらすみません)。高い目標を掲げるから、プロセスが楽しくなることを理解しているわけです。
とても令和的?な感性を持っているのかなと感じました。
昭和って、あえて極端に言っちゃうと、「戦いに勝つために、成功するためにみんなが頑張る時代」といえるのかなと。その次のフェーズ(あえて平成としてみますが)では、それだけじゃないんだ、企業は社会的な存在意義があるんだ、ひいては社会を良くするためにあるんだと変わってきたのかなと思っているんですね。
High Linkはさらにそこも飛び越えて、純然たる内なる欲求が拠り所になっているんだけれど、センスがいいし根がいい人たちなので、それが社会も幸せにすることに当然のようにつながっているという、すごく“今っぽい”メンバーが揃っている気がします。
小林:言われてみると、そうかもしれません。仮想敵がいるわけではないし、あらゆる角度、あらゆる領域で社会をよくしていくことが本当にカッコいいことだと思っているので、誰の目を気にするわけでもなく仕事に「わくわく」できている気がします。
Z世代のメンバーが多く在籍している会社なので、つまり、僕らの人生はそのまま、“失われた30年”なんです。でも、この先の未来が同じものであっていいわけがないと思っています。だから、今を一生懸命楽しみながら、未来を変えていきたいんです。
ほしい未来は自分たちでつくるしかないと思っていて、そのために今を一生懸命生きています。10年後のために何かをするというより、すぐにやって来る1.5年後をいかに変えられるかが未来をつくることだと捉えているのは、High Linkの特徴かもしれません。
──── 三好さんからみて、High Linkにはどのような気質を持った人が合っていると感じますか。
三好:若くて、知的で、エネルギッシュな会社だけれど、きっと足りないところも多いと思うんです。ただ、吸収力の高いメンバーが多いですから、新たなエッセンスが注がれたときに、それをぐんぐん吸収していくはず。そういう意味では、まだHigh Linkには少ない、経験豊富なメンバーに入社してもらえるとよさそうですよね。
経験を提供する代わりに、令和的?なエネルギーを感じられるでしょうし、お互いにとって素晴らしい出会いになるのではないかと思います。もちろん、異なる価値観やカルチャーを許し合える柔軟性は必須です。
小林:ありがとうございます。三好さんがおっしゃる通り、High Linkは組織が若いので、経験豊富なメンバーを探しているところでした。すでに要職に経験豊富な方が参画しはじめていますが、うまくフィットしているので、これからも採用には全力で取り組んでいく予定です。
──── CI・VIをリニューアルし、士気が高まっているタイミングだと思います。改めて、今後目指していく未来について、教えてください。
小林:toCスタートアップのリーダーになっていくことに、強い意志を持っています。市況もあってtoCスタートアップは苦戦を強いられていますが、High Linkは連続的に成長を続けていて、すでにレアケースです。
僕らがこのまま成長し続けることはスタートアップの希望になるはずですし、いずれ市況が好調になる要因にもなれるはず。既存事業である「カラリア」はもちろん、社会をよくしていく事業を連続的に立ち上げ、“生きるを彩る Life Tech Company”になっていきたいと思います。
構成:オバラ ミツフミ
デザイン:小野 郷
編集:塩盛 茉優子
High Linkでは、一緒に働く仲間を募集しています
応募は考えていないけど少し興味がある、という方も大歓迎なのでぜひ一度、カジュアルにお話しましょう!