CTO・野川賢二郎「僕たちの挑戦は、終わりなき旅」

「毎日が怒涛の日々で、正直あまり記憶がありません」——High Linkに参画してから今日までの軌跡を尋ねると、CTO・野川賢二郎はそう答えた。


学生時代にHigh Linkの事業である「カラリア」の初期バージョンをつくり、大学院修了後は新卒でLINEに入社。2年後にテックリードとしてHigh Linkに戻ってくると、数ヶ月後にはCTOに就任し、経営と技術をリードしてきた。たしかに、想像するだけで目が回るような毎日だ。


記憶すら吹き飛ぶほどの毎日をサバイブしてこられたのは、常に自分自身の「わくわく」を大切にしてきたからだと野川は言う。好奇心と職業哲学に素直になり続ける毎日は、仕事という建前を忘れるほどにエキサイティングだったそうだ。


CTOを務める野川は、これからどのような好奇心に従い、High Linkを成長させていくのだろうか——。


技術をテコに、あらゆる領域で価値を生み続ける“事業家集団”を目指すロードマップについて、話を聞いた。

「これからはエンジニアの時代だ」

—— 若くしてCTOを務められていますが、どのようなきっかけでエンジニアリングに興味を持たれたのでしょうか。

父親が技術者で、小さい頃から「これからはエンジニアの時代だ」なんてことを教え込まれていたんです。くわえて、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズをはじめ、偉大な起業家の話をよくしていて、ものづくりへの興味はずっと持っていました。

初めてプログラミングに触れたのは、高校生のときです。C言語から学習をはじめ、難度の高さに挫折しかけたこともありましたが、それ以上に興味が勝ってずっとコードを書いていましたね。いずれはプログラマーになりたいと思うようになり、大学も情報系の学部に進みました。

大学・大学院在学中に複数社でインターンを経験後、LINE株式会社にてサーバーサイド開発に従事。2018年よりHigh Linkに参画し、「カラリア」の初期開発に従事。組織・技術の観点から「香り×テクノロジー」をリードしている。変化に強く働いていてわくわくが止まらないプロダクト開発組織を目指している。

—— 学生時代はご自身でサービスを開発していたともお聞きしています。

友人とSNSの開発に挑戦したり、インターンに参加したり、サービス開発には積極的でしたね。振り返ってみると、僕の大学生活は、ものづくりへの興味を形にした時間そのものでした。

実は、カラリアの初期開発にも携わっています。大学の友人から南木(CEO・南木 将宏)を紹介されて、「香水のサブスクリプションサービスをつくりたい」と相談を受け、事業内容に興味を持って立ち上げをサポートしました。

—— そのあともHigh Linkのメンバーとして、一緒にカラリアを成長させていく選択肢はなかったのでしょうか。

ゼロイチで事業を立ち上げる経験はインターンやハイリンクでしていたので、数千万人のユーザーにサービスを提供している大規模な会社で働いてみたく、ファーストキャリアにスタートアップを選ぼうとは思っていませんでした。

南木に声をかけてもらっていた記憶もなんとなくありますが、当時は「本気で誘っているわけではないだろう」と、それほど真剣には考えていなかったのだと思います。振り返っても、いきなりスタートアップで成果を出せるほどの実力もなかったですし。

ただ、数年間経験を積んだら、いつか自分も起業しようとは思っていました。その当時は、挑戦の舞台がHigh Linkになるとは想像もしていなかったんですけどね。

人と香りの距離を近づける

—— 新卒入社したLINEでは、どのような業務を担当されていたのでしょうか。

ライブ配信サービス「LINE LIVE」や音楽配信サービス「LINE MUSIC」のバックエンドエンジニアとして働いていました。

主に新機能開発やパフォーマンス改善に取り組み、2020年には「LINE LIVE」の大規模トラフィック対策を目的とする負荷試験プロジェクトのリードを行い、「LINE DEVELOPER DAY 2020」に登壇させていただくなど、さまざまな経験をさせてもらいました。

LINEで働くエンジニアの方は、みなさんとても優秀な方たちです。僕が所属していたのはベテラン選手が中心で、20代は自分だけのチームだったこともあり、本当に毎日が学びにあふれていました。恵まれ過ぎている環境だったと思います。

—— 入社から2年間で退職されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。

よりプロダクトにコミットしたい、という気持ちが湧いてきたんです。

LINEは本当に素晴らしい組織でしたが、会社規模が大きいために、どうしても組織が分断されていました。

サービスの施策を考える人と、それを実装する人がキッパリ分断されていたので、もう少し「プロダクトそのもの」にコミットできる環境で働きたいという気持ちが少なからずあったんです。

そんなことを考えているタイミングで、南木から再度オファーをもらいました。僕が開発したプロトタイプから形は変わっていましたが、カラリアは大きくグロースしはじめていて、これからギアを上げていくタイミングでした。

—— 「プロダクトそのもの」にコミットできる環境が、転職の決め手だったのでしょうか。

プロダクトにコミットできる環境であることを最重要視していましたが、それ以外にも意識していたポイントが二つあります。

一つ目は、“人との距離を近づける”を実現しているかです。僕は、Webサービスの本質的価値は「距離を近づけること」にあると思っています。

「ZOZOTOWN」は人とファッションの距離を近くしましたし、「食べログ」は人と食事の距離を近くしました。「LINE」は人と人の距離を近くしていますよね。距離を近づけることは、Webサービスが持つ大きな価値なんです。

カラリアはどうかというと、人と香りの距離を近づけています。「香り」はまだまだアナログであり、テクノロジーが存在価値を発揮できていない領域なので、ここでWebサービスの本質的価値を発揮していくことには、とても大きな価値があるように思えました。

二つ目は、「いい人たちと働けるか」ということ。エンジニアはコンピューターと向き合う時間が長い職業ですが、そうはいっても人と人とのコミュニケーションなしでは成立しない仕事です。

LINEは一緒に働きたいと思える「いい人」ばかりの組織だったので、次に働く場所も、同じように気持ちよく働ける組織であるかを重視していました。

僕はHigh Linkの3人目のメンバーですが、当時在籍していた南木と岡本(COO・岡本 大輝)は、裏表のない人間です。立場や年齢を気にせず、仲間を大切にする人たちだったので、たとえカラリア事業が失敗に終わったとしても、彼らとなら一緒に挑戦し続けられると感じました。

—— 大切にしている二つのポイントを満たしていたことから、High Linkへの入社を決められたのですね。

自分で開発したプロダクトだったので、思い入れもありましたしね。

小さい頃に感じたものづくりへの興味とアントレプレナーへの憧れは、僕の職業観を満たしていたHigh Linkで形にすることにしました。

僕たちの挑戦は、終わりなき旅

—— 入社から現在に至るまで、どのようなストーリーがあったのでしょうか。

業務委託として一緒に「カラリア」を開発していた百瀬(百瀬凌也)を誘い、南木と岡本、しかメンバーがいなかったHigh Linkにjoinしました。まだ小さな組織でしたが、ミッションとビジョン、バリューを策定し、シリーズAの資金調達を実施。各部門の責任者を採用しながら、少しずつ組織を拡大していきました。

そこからは怒涛の日々で、正直あまり記憶がありません。テレビ取材によって知名度が広がったり、コロナ禍で急激なグロースをしたり、サイト全体をリニューアルしたりと、いくつかのターニングポイントはあったものの、出来事に一喜一憂する余裕がないほどタフな毎日でした。

ユーザーが増えたり、それにともなって売上高が伸びたりするのは嬉しいことですが、よろこびに浸れるのは一瞬なんですよね。次に達成すべき目標があるので、よろこんでいるばかりではいられず、すぐ日常に引き戻されちゃって。

ただ、新しい仲間ができた日のことは今でも鮮明に覚えています。同じ研究室に所属していた同級生たちが、続々と大企業を辞めて入社してくれて、High Linkのメンバーになってくれた嬉しさは忘れられません。

仲間が増えるたびに組織の強度が高まっていき、目標に進むスピードが日に日に早くなっていった日々の連続が、High Linkでのハイライトかもしれません。

—— 怒涛の毎日を過ごしてきたカラリアは、現在どのようなフェーズにあるのでしょうか。

僕たちはもともと、あらゆる領域で連続的に事業を立ち上げる“事業家集団”になることを目指していて、その挑戦の第一歩を踏み出せるフェーズになりました。カラリアが順調にグロースしたことで、足場が固まったタイミングです。

—— 理想を100%とすると、現在の進捗はどの程度だと感じていますか。

まだ1%くらいだと思いますが、非常にポジティブです。

進捗が芳しくないのではなく、掲げている目標が終わりなき旅のようなものなので、まだまだ1%くらいでしかないだけ。これから残りの99%を埋めるには一生時間をかけても足らないくらいで、常に枠を超えていく毎日を過ごせると思っています。

とはいえ、楽観的ではいられない課題もあります。特に組織の強度を上げていくことは喫緊の課題で、数年後に見据えたIPOを達成するには、経験豊富なメンバーのサポートが必要です。

プロダクトを磨き上げるためのPDCAは高速に回せるのですが、組織をよくするためのPDCAはそう簡単に回せません。時間がかかりますし、その分失敗が大きく影響します。

起業“一周目”の僕たちには、やはり経験が足りていません。ここを乗り越えなければ大きな成長は難しいと思っているので、組織からスタートアップの拡大を牽引してくれるメンバーの助けを借りながら、そこに僕らの強みを掛け合わせ、非連続の成長を描いていけたらと思っています。

技術の力で、あらゆる枠を超えていく

—— High Linkは新たに、「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」というミッションを掲げました。野川さんにとっての「わくわく」について、教えてください。

僕にとって、枠を超えていくための「わくわく」は、技術の力です。

インターネットの登場以前と以後、スマートフォンの登場以前と以後では、世界がまるで変化しましたよね。これまでも、技術は人類が枠を越えるための手段であり、私たちをわくわくさせる道具でした。

これからは、大規模言語モデルの登場による市場の大きな転換に一番わくわくしています。

僕は大学院時代、機械学習系の研究室で対話システムの研究をしていたのですが、当時はまさか言語モデルの発展がここまで大きな社会トレンドになるとは思ってもいませんでした。

今は大規模言語モデルの発展により、インターネットの登場以上に大きな市場の転換が生まれると信じているので、High Linkとしてその波に乗っていく未来にもわくわくしますね。

また、複数のプロダクトを急激に伸ばしているスタートアップはそう多くないので、そこに挑戦すること自体が枠を超えることだと思っているので、それもわくわくします。

—— 最後に、これからHigh Linkの仲間になる、未来のメンバーたちに向けてメッセージをお願いします。

足元の話をすれば、High Linkは稀有なデータを持つ組織であり、データを活用することに強みを持った会社です。香水という商品のメタデータがあり、さらには商品とユーザーのインタラクションデータを持っていて、これらを活用することで既存事業にもまだまだ成長の余地が残されています。

「香り」というアナログであり、テクノロジーが存在価値を発揮できていない領域で“人との距離を近づける”を実現していけることは、それだけでも十分に刺激的なはずです。

ただ、High Linkはそれで終わりません。

繰り返しになりますが、私たちは、あらゆる領域で連続的に事業を立ち上げる“事業家集団”を目指しています。領域を問わずにチャレンジを続けていくので、余白だらけの会社です。

この環境を利用すれば、会社の非連続な成長に乗っかって、自分自身を成長させることだってできます。形にしたい事業を自ら立ち上げるのも歓迎です。

僕の話を聞いて、少しでもHigh Linkに関心を持ってもらえたら、ぜひお話ししましょう。その際はぜひ、みなさんの「わくわく」を教えてください。

共有できる思いがあれば、僕たちと一緒に、あらゆる枠を超えていきましょう。

構成:オバラ ミツフミ
編集:塩盛 茉優子

 

 

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